RIKUPEDIAをご覧の皆様,こんにちは.今回コラムを担当いたします,M2の金子です.どうぞよろしくお願いします.
1.はじめに十種競技で○○○○点を出す,という目標を立てる際,ほとんどの人が100mで○秒,走幅跳で○mといったように各種目の目標記録をそれぞれ立てていると思います.ただ,十種競技での目標達成のために,各種目の記録目標をどれくらいにするか,なんとなく立てている人も多いのではないでしょうか.
十種競技における,ある総合得点に求められる種目ごとの記録について,先行研究では,持田ほか(2010)が,2009年時点で8000点を越えた十種競技選手66名のデータをもとに,種目別評価表および下限値を作成しており,日本人選手が8000点を超えるに当たってどのような課題があるのかについて検討しています.ただ,この先行研究では,対象を8000点以上のものに絞っているため,それ以下のレベルにおける種目別の基準については明確ではありません.
そこで,今回のコラムでは,この持田ほか(2010)の報告を参考に,より広い得点帯における種目別の評価表および下限値を作成し,十種競技の目標設定における新たな資料を作成していきたいと思います.
国際陸連ならびに陸上競技ランキングのWEBサイトから,5500点から8500点までの競技者648名の記録データを収集し,それを500点ごとに6つのグループに群分けを行いました.
(1)下限値
総合得点100点ごとに各種目の最低記録を求め,各種目の最低記録をy,100点ごとに区切った総合得点をxとして単回帰分析を行いました.単回帰分析によって求めたx値と切片の係数を用いて一次式を作成しました.
(2)評価表
各グループの各種目ごとに,次の式から境界点を求めました.
X±k×SD(X=平均値,SD=標準誤差,k=0.5or1.5)・・・・(式)
3.結果
(1)下限値
各種目で導き出した競技レベル別下限値を以下に示します(表1).
持田ほか(2010)は,下限値以下の種目があることは,例え他の種目で秀でているものがあったとしても,目標記録の得点を超えられない重大な制限要因である可能性があると報告しています.
このことから,目標とする総合得点の下限記録を下回っている記録がある場合,まずはその種目を強化し,最低ラインは超えるようにすることが重要な強化課題になることが考えられます.
(2)評価表
以下の表2~6は,レベルごとの十種競技種目別評価表です.
この評価表に関して持田ほかは,-2(劣る)に相当する種目をなくすことが,そのレベルにおける総合得点を達成するために重要なことであると述べています.それに加え,+1(やや優れる)や+2(優れる)に相当する種目を増やすことが大きな武器になることも述べています.
そのため,①:-2に相当する種目をなくし,②:+1から+2へと得意種目を伸ばしていくことが,記録達成に重要なことであると考えられます.
今回のコラムが,少しでも多くの十種競技選手の目標設定の助けになれば幸いです.