高強度インターバルトレーニングの分類と効果

DC2 白木駿佑

RIKUPEDIAをご覧の皆様

あけましておめでとうございます.本年も陸上競技研究室をよろしくお願い致します.
今回は,DC2の白木が担当致します.年が明け,冬季練習は一層本格化することと思います.本コラムでは,いま注目を集めている高強度インターバルトレーニングについて複数の研究を紹介していきたいと思います.ぜひ,トレーニング立案の参考にしてください.

はじめに

高強度インターバルトレーニングと聞いて最初に何を思い浮かべますか?タバタプロトコルのキツイ思い出かもしれません.このプロトコルはあまりにも有名で,高強度インターバルトレーニング流行の火付け役になったと言っても良いでしょう.実際に,世界のフィットネストレンドの第1位に「HIIT(High intensity interval training: 高強度インターバルトレーニング)」がランクインしたことからも(Thompson, 2017),その注目度の高さがわかります.それでは,簡単にタバタプロトコルについて紹介します.

タバタプロトコルについて

Tabata et al. (1996) は,(20秒運動→10秒休息)×7-8の高強度インターバルトレーニングを研究対象者に6週間行わせ,そのトレーニング効果を検討しています.そして,有酸素性能力の指標である最大酸素摂取量(V ̇O2max)と無酸素性能力の指標である最大酸素借(MAOD)の両方が高まったことを報告しています.このことから,タバタプロトコルは,有酸素性能力と無酸素性能力の両方を高めることが示唆されました.さらに,このプロトコルの利点としては,運動が4分以内で終わるということです.この時間効率の良さが1つの特徴でもあります.一方で,タバタプロトコルと20分間の持続的運動のトレーニング効果を比較した別の研究では,両方のトレーニングとも同程度の効果があったことが報告されています(Foster et al., 2015).さらに,この研究では運動の面白みも数値として測定しており,タバタプロトコルは有意に低いことが示されています.このことは,タバタプロトコルは,精神的ストレスが高いことを示唆しており,長期的に行うには高いモチベーションが必要になるでしょう.ただし,この研究では,一般成人を研究対象者としているため,日常的にトレーニングしている方には解釈に注意が必要です.
タバタプロトコルの詳細については書籍が販売されていますので,そちらを参考にしてみてください(田畑,2015).

  インターバルトレーニングの構成と分類 

インターバルトレーニングは,少なくとも以下の9つの変数で構成されています(Buchheit and Laursen, 2013a).
①運動強度,②運動時間,③休息時間,④休息期運動強度,⑤1セットの総時間,⑥セット数,⑦セット間休息時間,⑧セット間休息期運動強度,⑨運動様式
9つある変数を調整することによって身体に対し強い適応を生じさせることができると考えられており(Buchheit and Laursen, 2013a),その中でも重要な変数と考えられているのが運動強度,運動時間,休息時間,休息期運動強度です(Astrand et al., 1960; Christensen et al.,1960).一方で,インターバルトレーニングは,構成要因の多さから無限の組み合わせが存在し,目的にあったプロトコルを選択することは困難です.そこで,Buchheit and Laursen(2013a)は,インターバルトレーニングを4つのタイプに分類し,それぞれの特徴をまとめています.

①RST(Repeated Sprint Training: 3-7秒間の全力運動,60秒未満の休息)
 運動時間と休息時間の組み合わせによりD,Eいずれかの適応が見込まれる
②SIT(Sprint Interval Training: 30秒間の全力運動,2-4分の完全休息)
 Eの効果が見込まれる
③Short IT(Short Interval Training: 運動時間60秒未満)
 変数の組み合わせによりA,B,C,Dいずれかの適応が見込まれる
④Long IT(Long Interval Training: 運動時間60秒以上)
 変数の組み合わせによりC,Dいずれかの適応が見込まれる
A:有酸素性能力
B:有酸素性能力+神経系能力
C:有酸素性能力+無酸素性能力
D:有酸素性能力+無酸素性能力+神経系能力
E:末梢の有酸素性能力+無酸素性能力+神経系能力

このようにインターバルトレーニングが4つのタイプに分類されているものの,特にShort ITに関しては,変数の組み合わせによる幅が広すぎるためにトレーニング効果の特定ができていません.したがって,複数の研究を概観しながら更なる細かい分類とその効果の検討が必要になりますが,Buchheit and Laursen(2013b)は,有酸素性能力に対する具体的なトレーニングプロトコルについて提案しています(表1).


また分類は異なりますが,Laia and Bangsbo(2010)は,無酸素性トレーニングとしてインターバルトレーニングを3つの区分に分けています(表2).変数の組み合わせによっては,スピードトレーニングはRSTに,出力型スピード持久トレーニングはShort ITに,維持型スピード持久トレーニングはShort ITとLong ITに該当します.特に無酸素性能力の向上を目的としたトレーニングを立案する際には,この分類を用いると良いかもしれません.



おわりに

今回のコラムでは,高強度インターバルトレーニングの分類について紹介しました.変数の組み合わせによっては,有酸素性能力と無酸素性能力を両方もしくは片方を効果的に高めることができるトレーニングになり得ます.高強度インターバルトレーニングの効果については未だ研究が足りませんが,本コラムを合目的なトレーニングの立案に役立ててもらえれば幸いです.



参考文献
Astrand, I., Astrand, P.O., Christensen, E.H., and Hedman, R. (1960) Intermittent muscular work. Acta. Physiol. Scand. 48: 448-453.
Buchheit, M. and Laursen, P.B. (2013a) High-intensity interval training, solutions to the programming puzzle. Part I: cardiopulmonary emphasis. Sports Med. 43(5): 313-338.
Buchheit, M. and Laursen, P.B. (2013b) High-intensity interval training, solutions to the programming puzzle. Part II: anaerobic energy, neuromuscular load and practical applications. Sports Med. 43(10): 927-954.
Christensen, E. H., Hedman, R., and Saltin, B. (1960) Intermittent and continuous running. (A further contribution to the physiology of intermittent work.). Acta. Physiol. Scand. 50: 269-286.
Foster, C., Farland, C.V., Guidotti, F., Harbin, M., Roberts, B., Schuette, J., Tuuri, A., Doberstein, S.T., and Porcari, J.P. (2015) The Effects of High Intensity Interval Training vs Steady State Training on Aerobic and Anaerobic Capacity. J. Sports Sci. Med. 14(4): 747-755.
Iaia, F.M. and Bangsbo, J. (2010) Speed endurance training is a powerful stimulus for physiological adaptations and performance improvements of athletes. Scand. J. Med. Sci. Sports., suppl. 2: 11-23.
Tabata, I., Nishimura, K., Kouzaki, M., Hirai, Y., Ogita, F., Miyachi, M., and Yamamoto, K. (1996) Effects of moderate-intensity endurance and high-intensity intermittent training on anaerobic capacity and VO2max. Med. Sci. Sports Exerc. 28(10): 1327-1330.
田畑泉(2015)究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング.田畑泉著,扶桑社:日本.
Thompson, W. R. (2017) Worldwide survey of fitness trends for 2018. ACSMs Health Fit J, 21(6), 10-19.
2019年1月22日掲載

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