こんにちは.陸上競技研究室MC2田中義也です.
このコラムは,陸上競技に携り実施し,興味をもっている様々な方が見てくださっていると思います.
今回のコラムでは,日本において広く実施されている運動部活動とその中での陸上競技の実施状況を見ていこうと思います.
運動部活動の成り立ち
日本において運動部活動の歴史は古く,中澤(2017)は明治時代にさかのぼります.そのころ他国の知識文化を日本に取り入れるために帝国大学(現在の東京大学)へ外国人を呼び寄せました.その時に同時に持ち込んだスポーツを学生が組織として行うようになったことが始まりとしています.そして中澤(2011)は国内外における運動部活動の実施状況や研究状況をまとめたレビューにおいて,日本では陸上競技のみならず,青少年スポーツの中心が学校の運動部活動にあり,なおかつ,多くの生徒が部活動に参加しており,このような運動部活動の実施状況は国際的に極めて珍しいと多くの論文で述べているとしています.
日本における運動部活動内の陸上競技
日本は他国と比較して運動部活動が広く発達していることがわかりました.陸上競技も運動部活動において多く行われているのでしょうか.公益財団法人日本中学校体育連盟(2017)の資料をもとに各競技の運動部活動への参加人数を示しました(図1).
このように調査によると,部活動の種類はたくさんありますが,その中でも陸上競技の参加者は全体の2番目となっています.また,個人競技種目内においては日本国内において直近の三年間で最も多い参加者を有していることがわかりました.
また,陸上競技部活動では,他競技の運動部活動と比較して参加者数より数が多いといった特徴だけではなく,他競技や部活動全体の平均と比べ,図2に示したように競技指導専門の外部指導者が際立って少ないです.この調査から,顧問である教師が教師としての職務以外に指導者,コーチとして部活動指導を行っている場合が多いと考えられます.
中学校を対象とした陸上競技の調査では,多くの生徒が参加し,コーチではなく教師が指導をしていることがわかりました.高校でも全国高等学校総合体育大会(通称インターハイ)のような全国大会が開催され,活発に実施されています.
さらに,高等教育機関である大学陸上競技部に焦点を当ててみると大学陸上競技部に焦点を当ててみると,陸上競技日本ランキング上位30名のうち,約半数が大学陸上競技部参加者であることが分かりました(図3)
陸上競技部活動では参加者が多くいるだけではなく,日本国内において高い競技力を持った選手が多くおり,運動部活動というカテゴリ内にとどまらず活躍していると考えられました.
また,公益財団法人日本陸上競技連盟に記載されている強化委員会名簿にはすべてで39名(重複者あり)いますが,そのうち半数を超える21名が大学教員であったことから大学教員は,部活動指導者としてのみではなく,国内競技力向上にとって重要な役割を担っていると考えられます.
今回のコラムでは,運動部活動とその中での陸上競技の実施状況について書かせていただきましたが,運動部活動は陸上競技において多くの参加者がいるだけではなく,日本のトップで活躍するものも有し,その指導者も国内競技力向上に携わる役割を担っている重要なカテゴリであることがわかりました.
以上のような,競技力向上に関する知識以外のこのような競技のバックグラウンドに関する情報を知っておくことは重要であると考えられます.なぜなら‘する’だけではなく,‘観る’,‘支える’という立場が,生涯を通してスポーツを楽しむうえで重要であると文部科学省のスポーツ立国戦略の中にも述べられており(文部科学省,2010),陸上競技のみならず,スポーツ全般においてより多くの人がそれぞれに合ったやり方でスポーツを楽しみながら携わることに背景知識の理解が必要で役立つからです.今回のコラムが,皆さんにとっていつもとは違う視点で陸上競技を見られるようになることで,より陸上競技を楽しめる一助になれば幸いです.
2020年東京オリンピックで日本人アスリートの活躍が期待されますが,所属に注目すると,私たちと変わらない学生アスリートが多く活躍しているかもしれませんね.