前田といえば,円盤投!...ですが,今回は砲丸投についてのコラムになります.
現在,砲丸投では「グライド投法」と「回転投法」という2種類の投法が主流となっています.今回はこれらのうち,「回転投法」の可能性について紹介します.
砲丸投大国(と言っていいでしょうか)USAでは,回転投法が圧倒的な主流となっており,近年の世界レベルの競技会においても回転投法を用いる競技者が上位に占める割合は多くなってきています(表1).一方で,近年の日本選手権上位入賞者の投法について見てみると,まだまだグライド投法の占める割合が多いのが現状となっています(表2).
しかしながら,競技・指導の現場では,「小さな身体で活躍するには回転投法が有利である」といった見解をよく耳にします.植屋(1994;2004)は,回転投法は筋力的に劣るが小回りの効く,器用さを持った日本人競技者向きの投法であると指摘し,回転投法への積極的な取り組みが競技力の向上,ひいては世界への挑戦のために重要であると述べています.さらにBosen(1984)は,グライド投法との比較の中で,回転投法は限られた空間の中で回転することができ,低身長で素早く動くことができる競技者に適性があると述べています.
実際に回転投法を用いている選手であるReese Hoffa選手(USA,Personal Best = PB:22.43m)やAdam Nelson選手(USA,PB:22.51)の身長を見てみると,それぞれ182cm,183cmと世界トップレベルの砲丸投競技者の中では低身長であると言えます.またMike Spiritoso選手(CAN)は身長176cm,体重105kgと砲丸投競技者の中では非常に小柄ながらも,20.83mという記録をマークしています.
このような背景から,大山卞(2010)は世界ランキング上位競技者の記録と身長および投法について調査しました(n = 45,PB:21.04m以上の競技者).その結果(図1),身長が190cm未満の競技者では19名中13名,さらに185cm以下では8名の競技者全員が回転投法を採用していることがわかりました(大山卞,2010).つまり,21mを超えるレベル(世界選手権モスクワ大会の3位の記録が21.34mであったことから,21mを超える記録はおおよそ世界選手権上位入賞レベルと言えます)では,低身長で成功している競技者はほとんどが回転投法を採用していることが明らかとなりました(大山卞,2010).
以上のことを踏まえると,体格が劣る(身長が185cm以下の)日本人砲丸投競技者が,今後世界レベルの競技者と戦っていくためには,回転投法を採用することが重要となるかもしれません.
このような背景があるにもかかわらず,なぜこれまで多くの日本人競技者は,回転投法を採用してこなかったのでしょうか.
これは個人的な見解になってしまいますが,最後に...
6月28日に,新潟にて日本選手権男子砲丸投決勝が行われます.