スプリント能力と形態的特徴の関係とは?

DC2 梶谷 亮輔

RIKUPEDIAをご覧の皆様,こんにちは.DC2の梶谷です.
 本コラムでは,短距離競技者のスプリント能力と形態的特徴との関係について検討された研究を紹介していきたいと思います.

形態的特徴には,筋や骨格,身体各部の長さなどが含まれますが,本コラムでは計測が比較的容易であり,見た目でも判断しやすい身長やその他の身体部分長に着目します.

①スプリント能力と身長との関係
 スプリント能力と身長との関係については,古くから検討されています.世界一流競技者を対象に100m走の分析を行い,疾走速度と身長との関係を検討したところ,両者の間には有意な相関関係は認められなかったことが報告されています(Hoffmann,1971).このことについては,近年の報告においても同様です.大学男子短距離競技者21名を対象に,60m走を行わせたところ,60m走のタイムおよび1歩ごとの疾走速度と身長との間には有意な相関関係は認められなかったことが報告されています(永原・図子,2014).これらのことから,身長の大小によって,スプリント能力は決定されないことが示唆されています.
 しかし,身長はピッチとストライドに影響を及ぼしていることが考えられます.長身者(1.75m以上)と短身者に分け,身長の大小による疾走動作の特徴を検討している研究をみてみます(横井,1988).すると,長身短距離競技者の動きの特徴は,ストライドが大きく,下肢の動作範囲が小さい傾向にあったと報告されています.一方で,短身短距離競技者は,下肢の動作範囲とその速度が速いことが報告されています.

②スプリント能力と身体部分長との関係
 図1に示した身体部分長について,上述した身長以外の結果を紹介します. 60m走タイムおよび1歩ごとの疾走速度と肩峰高,転子高,大腿長および下腿長との間には,有意な相関関係は認められなかったことが報告されています(永原・図子,2014).また,これらの部分長は身長の長短にある程度比例すると考えられます.中でも下肢長に着目されることは多く,その下肢長は身長と同様にピッチとストライドに影響を及ぼしているようです(宮丸,1971).一方で,60m走タイムと足趾長および前足長との間には有意な相関関係が認められており,足長との間にも比較的高い相関係数(r=-0.39, p=0.08)を示したことが報告されています.このことから,長い足趾や前足部を有している競技者ほど,高いスプリント能力を有していることが示唆されています(永原・図子,2014).

まとめ
 形態的特徴は,遺伝的にかなりの部分が規定されており,特に,成人の競技者は変化することがほとんどありません.そのため,いわゆる“自分のタイプ”とはこのような要因から考えるとわかりやすいかもしれません.例えば,第14回のコラム(スプリント走におけるピッチとストライドに関する要因)には,100m走の最大スピード局面における記録・身長別のピッチ・ストライドの目安が示されています.このような目安となる数値を自分の身長と照らし合わせながらトレーニングすることも有効なのではないでしょうか.
 また,ピッチやストライドをすぐに算出することは困難である場合もあるため,身長別の30m地点の歩数の目安を示しています(表1).このような指標を用いてトレーニングを試みてみてください.

図1 身体部分長の定義(永原,図子,2014をもとに著者作成)
(a)身長,(b)肩峰高,(c)転子高,(d)大腿長,(e)下腿長,(f)足長,(g)足趾長,(h)前足長,(i)後足長


表2 身長別にみたモデル30m通過ステップ数(宮代ほか,2013をもとに著者作成)


参考論文:
Hoffmann, K. (1971) Stature, leg length, and stride frequency. Track Technique, 46: 1463-1469.
宮丸凱史(1971)短距離疾走フォームに関する実験的研究—脚長と疾走フォームについての考察—.東京女子体育大学紀要,6:22-23.
宮代賢治・山元康平・内藤 景・谷川 聡・西嶋尚彦(2013)男子100m走における身長別モデルステップ変数.スプリント研究,22:57-76.
永原隆・図子浩二(2014)全力疾走の加速局面における疾走能力と身体部分長との間の関係.スプリント研究,23:5-15.
横井孝志 (1988) 形態的要因が走動作におよぼす影響に関する生力学的研究.昭和62年度筑波大学大学院教育学博士学位論文.

2017年8月24日掲載

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